お盆を過ぎると高原には秋風が吹き始め、スキー場のススキの穂が白く揺れ、濃紫のエゾリンドウ、 黄色のアキノキリンソウ、が彩りを添えます。

白いウメバチソウと黄色の花穂を伸ばしたキンミズヒキの群れが遊歩道わきに、ヤマハハコの粉を ふいたような白さも道路わきに目立ちます。

一の瀬湿原ではチダケサシがピンクに染まり、アキカラマツや瓶を洗うブラシのように長い サラシナショウマ が背をピンと伸ばし青紫色の トリカブト が愁いを湛え秋の深まりを知らせます。

アサギマダラが南への帰路につき川を下ります。
鶯も郭公も声をひそめ、すっかり朱に染まったアキアカネもいつのまにか姿を消してしまったようです。

いよいよ秋は深く紅葉も間近です。

秋の深まりとともに秋山に通じる雑魚川渓谷沿いのいわゆる秋山林道は、更に魅力を増します。

ブナの原生林に覆われた昼間でも薄暗い川辺で、産卵の為に浅瀬に集まるイワナの群れや、水を飲む 蝶の群れを目にする事があります。

滝壷の岩にはりつくようにして数少ない秋の花のヤマホトトギスや オオシラヒゲソウ 、チョウジギクが咲き、どの花も微妙な美しさを秘めいくら見ていても飽きません。

水しぶきを受けながら、川の流れを見つめながら、激しい川音を聞きながら自然が与えてくれる安らぎ を植物も動物も体言しているのだな、と感心させられます。

ブナとカエデが作りあげるここの紅葉は明るく空が澄んでいる日はことのほか見事で、 こちらを陽性の紅葉とすれば、蓮池から一の瀬迄の林道ぞいの紅葉は、 どちらかというと落ち着いた紅葉といえましょう。

カーブを曲がる度に、異なった景観が開け、トガやシラビソ等の針葉樹の緑がアクセントとして、 イロハカエデの朱色を一層引き立てます。

晴れた日には華やかに、曇った日には深みを加え、その時その時で異なった表情を見せてくれます。

華麗に燃え盛る美しさが、早くも訪れる霜の為に一瞬にして失われても、山は何度もその衣装を 替えて、我々の目を楽しませてくれます。

カエデやナナカモドの朱に次いてシラカバ、ダケカンバそしてカラマツの黄金色の、 それからすっかり葉を落とした木々の灰色の幹と針葉樹のくすんだ緑 とがつくる淡い色合の衣装といったように何回もお色直しをするのです。

葉が落ちてしまうと、朱色に色づいたコナシやナナカモドの実が目に鮮やかになります。

冷たく冴え渡った青空とそれに映えるナナカマドの朱い実とが初冬の深山の一人歩きを慰めてくれます。

殆ど葉が落ち尽して骸骨のような枯れ枝の群れの中に凛として残る朱色の実は気高く、驚嘆と憧憬 とそして羨望の念をすら禁じ得ず、誠に孤高にして存在感にあふれています。

霜冴えの空を切り分く残果の朱





chalet@shigakogen.jp
Copyright(c) 2000 Chalet Shiga all right reserve